簡単に説明しよう。
このストーリーは、お尻のあ◯を舞台とした、一人の中年男性とドクターKとの甘く切ない物語である。
2021年冬
車のエンジン音と横断歩道の軽快な音楽が、湿った窓ガラスの外から聞こえてくる。
ビッポ ビッポ ビッポ
俺はファンヒーターで冷えた体を温めながら、パソコンでメールチェックをしていた。
はぁ〜
無意識にため息がでた。
『いけない、いけない』
俺は右手で頭をポンポンと叩きながら、我にかえり冷静に自分の心境を振り返った。
俺は、あの日からため息が無意識に出てしまうようになってしまった。
そう、大腸カメラをすることに決まったあの日から。
『胸が苦しい、切ないなぁ』
油断をすると、ついついネガティブな方向に引きづられてしまう。
『無理もないよなぁ』
なぜなら俺は、あの病院からの連絡で、一気にどん底に突き落とされてしまったのだから。
まさに、月9ドラマで突然ふられた男のようであった。
俺は天井を見上げ、照明の灯りを目を細めながら見つめていた。
ブーーブーーブーーブーー
電話か。
会社からかな?
俺の勘はよく当たる。
ふと画面を見ると、先日携帯に登録したあの病院からの電話であった。
俺は、また不安が脳裏を走った。
なぜなら、つい3日ほど前に大腸カメラの予約をしたばかりであったからだ。
『どうしたんだろう』
『何の用だろう』
俺は慌てて電話にでた。
「あ、はいはい、も、も、もしもし」
完全に、彼女のペースに引き込まれた弱い男のようだった。
携帯のバイブレーションに負けないくらい俺の声も震えていた。
『も』と『し』の比率は本来2:2のところ5:2という比率、つまり動揺している心理状態を示していた。
「お世話様ですぅ〜、ご予約された日にドクターが急きょお休みになっちゃいまして〜、お日にち変えていただけますかぁ〜」
聞き覚えのある声だった。
語尾を無駄に伸ばすあの女性からであった。
「あ、は、はい?」
相変わらず頭が悪そうな話し方に俺はイラッとしながら、強い口調で聞き返した。
そしてすぐさま被せるように、
「そんな、酷いですよ〜」
「心配で心配で、早く検査したいのに〜辛いですよ〜」
「他に代わりの先生いないんですか?も〜う、はぁ〜」
カツカツカツカツ‥
俺は机を指先で小刻みに叩きながら、強い口調でそう尋ねた。
まるで、完全に嫉妬に狂った男のようであった。
これ以上俺をいじめてどうしようと言うのか。
いじめ尽くして、挙げ句の果てに俺の肛門にカメラをいれて誰が得すると言うのか?
どれだけドSの変態野郎なんだ!
この、豚野郎めがっ!
『あ、いけない、いけない』
俺としたことが、ついついまたネガティブな方向に思考がいってしまった。
俺が、あまりの強い口調でまくしたてたため、しばらく沈黙となった。
2秒ほどの沈黙のあと、女性は事務的な口調でこう答えた。
「肛門科のドクターならいるんですが〜、あっち専門で大腸カメラは得意じゃないみたいでして〜」
「それでもよろしければ、その日にできますがぁ〜』
「え?」
俺は一瞬動きが止まった。
意味が分からなかった。
「ど、どういうことですか?」
「ドクターにあっち系とか、こっち系とかあるんですか?」
言っている自分でも、何を言っているか全く分からなかった。
「はい、その通りです」
あれほど、ウダウダした口調の女性はこれまでないほど、はっきりとした歯切れの良い返事であった。
Yes, that’s right!
ま、さ、に!その通りであると言う、何とも気持ちの良い口調であった。
俺ははっきりと強い口調でそう答える女性に釣られ、つい答えた。
「そ、それじゃぁ、あっち系でお願いします」
俺は、完全に迎合して身を委ねていた。
『はい、かしこまりましたぁ〜』
女性は、事務的な口調でそう答えた。
よく分からない展開になっていたことは明白であったが、とりあえずあっち系に委ねることにしたのである。
まさに、穴を舞台としたアナザーストーリー。
つづく


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