簡単に説明しよう。
このストーリーは、お尻のあ◯を舞台とした、一人の中年男性とドクターKとの甘く切ない物語である。
2021年冬
診察から数日後、再び俺は病院の待合室にいた。
今日はいよいよ本格的な大腸カメラの検査が行われる日だ。
手汗が止まらない俺をよそに、隣に座っているおじいさんが小声で呟いた。
『わしも78年間生きてきて、ケツにカメラ入れるなんて初めてじゃ…』
その言葉を聞いて、俺は無言で頷いた。
「同志だ」
少し勇気が湧いてきた。
ポーン
『69番の方、23番の診察室へどうぞ』
またしても69–23
何度もこの番号を引き当てる運命を呪いながら、丁寧に診察室の扉を開けた。
K先生…
俺の方をガン見する様に、背筋を伸ばし座っていた。
その姿は、まるで、卒業式で校長先生の話を真剣に聞いている最前列の卒業生の様だった。
『おかえり、待ってたよ、多々巻さんっ』
K先生はご機嫌そうに俺を向かい入れた。
俺は、言葉を発することなく、軽く会釈した。
『脱いで!』
K先生は、突然厳しい表情になり言い放った。
「はい…」
俺がそう答えると、K先生はにやりと微笑んで言った。
『大丈夫、僕が、優しく、するから、さぁ早く』
その一言に、俺は少し背筋が寒くなった。
『それじゃあ、多々巻さん。そこに、仰向けに、寝ろ、あっ、寝て。』
K先生は、明らかに息遣いが明らかおかしかった。
俺は、言われるがままパンツを脱ぎ、診察台に仰向けになった。
「あ、は、恥ずかしい…」
前回と同じく、タートルネックのニットに靴下という格好で今度はカエルの様にガニ股に足を開いた。
『いいね、いい感じだよ』
K先生は真横でゴム手袋を装着しながら満足げに呟いた。
K先生は、お尻のあ◯にゼリー状のものを塗りたくった。
『じゃぁ、入れるよ』
K先生は男らしい声でそう言った。
にゅぷ
「あっ、あん」
カメラの先っちょが入り、思わず声が出てしまった。
K先生は優しく言った。
『いいよ、みんな、最初はそう』
カメラが挿入されると、モニターに俺の腸内が映し出された。
「うわぁ…これが俺の中身か…」
妙な感動と共に、怖さが込み上げてきた。
俺が、薄目でモニターを見つめていると、K先生が急に声を上げた。
『あ、これは…』
目の前に、明らかに異様な塊がモニタいっぱいに写し出された。
玉虫色でほんのりと血が滲んでいるのが素人の俺にも分かった。
『これ、大きいなぁ、大きい。多々巻さん、これ、見えるでしょ』
K先生は急に医者の様な口調で俺に異形物を示した。
「え、な、何ですか、それ…?」
俺は一気に血の気が引いた。
それはまるで、圧倒的一番人気の馬に単勝で全財産をぶっ込み、見事に外した気分のようだった。
『ひとまず、帰りに、また見るから』
K先生は柔らかい口調で言った。
千代田線にてとりあえず終点代々木上原まで行き、帰りの綾瀬で乗り換えのために様子を見るかの言い方だった。
俺は、ポジティブに先へと進むカメラの映像など全くどうでも良く、まさにこの世の終わりのような気分であった。
「あの異形物は只者ではない。明らかに毒毒しい感じだった」
映像が繰り返し脳内をリピートする。
そんな俺に気にすることなく、K先生はなぜかやたらと俺の足や背中を撫でたりしてくる。
単なる優しさか?それとも…
俺はK先生のボディタッチにどう反応すればいいのかわからずに、無言で横たわっていた。
車窓の景色が全く目に入らない様に、モニタの画面など、もはやどうでも良くなっていた。
「あれは、一体なんだったのだろう」
折り返しの綾瀬での乗り換え確認が気になって仕方がない。
K先生は、相変わらず俺の背中や生足を優しいタッチで撫でている。
俺は、遂に神に祈り出した。
まさに、穴を舞台としたアナザーストーリー。
つづく


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