このストーリーは、お尻のあ◯を舞台とした、一人の中年男性とドクターとの甘く切ない物語である。
2021年冬
『この企画でいきましょう!』
テンポ良く議題が進み、会議も終盤に差し掛かった時である。
ブーーブーーブーーブーー
マナーモードにしていた俺のスマホが鳴った。
「いやぁ、会議中なんだけどなぁ」
ブーーブーーブーーブーー
そう思いしばらく放置するも、スマホは鳴り止まない。
「もしかしたら部下の田中かもしれない」
直感でそう思った。
だいたい俺の勘は当たる。
俺はzoomのカメラ越しに、スマホを指挿し電話アピールをして、会議室を出て電話に出たのである。
不機嫌そうに俺は早口で電話に出た。
『あーもしもし』
電話口は、女性の声であった。
『先日の健康診断の結果で電話いたしました〜、再検査になりましたのでお伝えしますぅ〜』
20代くらいであろうか。
若い看護師らしい女性からの電話であった。
え?今再検査って
な、な、な、何何何
『あ、あの、どこか悪いんでしょうか?』
明らかに俺は焦っていた。
そんな俺を全く気にもせず、女性は事務的に早口で答えた。
『先日の便検査のほうなんですがぁ、血がビミョーに混ざってまして〜』
『しかも2日分ともいい感じなんで〜
大腸カメラを受けてもらいたい感じなんですよね〜いつにします〜?』
アホみたいな口調に俺は苛立ちを感じた。
だが、情報を聞き出す必要があると認め、あえて丁寧な口調で応えた。
『き、きっと痔ですよ』
『あ、思い出した、心当たりあります、きっとそうだと思います!』
『あ、またいくらでも便の再検査やりますから、ご指示お願いします!』
俺は声を振るわせながら、異常なほど懇願していた。
俺は明らかに忖度して冷静さを失っていた。
『か、かけ直します』
俺は落ち着くために、一旦電話を切った。
「何で再検査なんだ。何で血が混ざってるんだ。」
「あ、そうだ、切れたんだよ。きっと痔に違いない」
もう会議どころではなかった。
俺のイマジネーションが高速でかき立てられた。
まるで、Blu-rayの100倍速再生の様な異常な速さであった。
妄想は加速した。
「肛門からカメラが入ったらどうなるんだろう?」
「太さはどれくらいなんだろう?」
「お尻から入って口から出てきたらどうしたらいいんだろう?」
「鼻から入れるカメラがあるって聞いたことがあるよな?」
100倍速の妄想は、しばらく止まらなかった。
予想以上に想像力はよりエスカレートして、もはや異常な精神状態となっていた。
頭の中は蛇の様にうごめく大腸カメラの妄想でいっぱいであった。
もちろん、会議どころではなかった。
俺はすぐさまリダイヤルで病院に電話をしたのである。
『えーと、もしもし、先程健康診断の再検査の電話をいただいたものですが、お、お電話下さった看護師さん、い、いますか?』
焦る声でそう伝えると、先程とは声が違う女性が電話に出た。
『はい、どちら様ですか?』
『まず、フルネームを教えていただけますか?』
俺は答えた。
すると女性は言った。
『あーはいはいはい、分かりました』
『肛門から血が出ている人で間違いないですか?』
俺は聞き返した。
『はい、は、はい?』
女性はゆっくりと聞き返した。
『肛門から、血が、出ている、人ですよね?』
英語を話せない日本人に、ゆっくりと英語を伝える外人の様な口調であった。
『あ、はい、そうです。』
俺は、素直にそう応えた。
そう、なぜなら肛門から血が出ている人に間違いないからである。
俺は、肛門から血が出ている人としてふさわしい対応を迫られ、その場で大腸カメラの予約を入れたのであった。
その日から1週間が経過した。
俺は毎日毎日、大腸カメラのイメージトレーニングを繰り返し、精神は疲弊していた。
夢に見るほど、頭の中は大腸カメラで満ち溢れていた。
不安で不安で仕方なかった。
痛いのか?
痛くないのか?
ねぇどっちなんだい!
時に、なかやまきんに君の様になることもあった。
俺は肛門から血が出ている人だから、神様、どうすれば良いか教え下さい。
神様にも仏様にも祈った。
この時はまだ知らない。
どんな未来が待っているのかも。
運命のドクターとの出会いがあることも。
穴を舞台としたアナザーストーリー
つづく


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