ドクターK物語 第10話(最終話)

簡単に説明しよう。

このストーリーは、お尻のあ◯を舞台とした、一人の中年男性とドクターKとの甘く切ない物語である。

2021年冬

『多々巻さん、準備はいいかい?』

K先生の声が静かに響いた。

ついに切除の瞬間が迫っている。

モニターに映し出される玉虫色に光る異腫瘍は、根本を締め付けられ、まるで最後の抵抗をしているかのようだ。

やだよー

やだよー

モニター越しに、マイクタイソンが俺に涙目で助けを求めるように見えた。

あの圧倒的な強さで世界中のメディアを釘付けにして、ボクシング界のいち時代を築いたあのマイクタイソンが…。

K先生にいとも簡単に弄ばれている。

俺も、その一人。

俺の体は緊張で固まり、ケツ◯は梅干し婆さんのように完全に縮こまっていた。

最後の戦いが始まる。

ファイナールラウーンド!

カーン!

泣いても笑っても最終ラウンド。

『これで完全に根元をつかんだよ。あとは切るだけだ。』

K先生の自信あり気な声に、モニターを見つめる俺の視線も固まった。

あまりの頼もしさに、ちょっとK先生に体を委ねたくなった。

ワイヤーが根元をじわじわと締め上げていく。

その動きは、まるで獲物を締め落とすライオンのようだった。

ライオンの様に激しいK先生は、俺を優しく気遣った。

『少し引っ張られる感覚があるけど、リラックスして。』

『俺が着いてるから。大丈夫、大丈夫だから。』

K先生の逞しくも優しく真摯な声に、俺は完全に心を奪われていた。

『先生、先生、せんせーい』

俺はあまりの怖さに体が硬直し、絶叫していた。

絶叫系のアトラクションで女子が男子を好きになりやすいように、俺は大腸カメラで『吊り橋効果』の心理マジックにかかっていた。

K先生、あたいを好きにして下さい…

K先生は言った。

『よし、分かった、いくぞー』

その声とともに、ワイヤーが腫瘍の根元を完全に締め上げた。

「ジュウッ…」

モニターに煙が広がり、腫瘍が膨れ上がって振動するのが見えた。

その瞬間、尻◯の奥の方で軽い鈍痛が走り、その衝撃で俺の全身は硬直した。

『取れた!』

K先生の声が響き渡る。

モニターには、ワイヤーにぶら下がる切り取られた腫瘍が映し出されていた。

『よーし終わった!これでおーわり。』

K先生は、カメラをテンポよく引き出した。

にゅぷ

「ひぃぃぃぃぃ」

俺は思わず声を上げた。

K先生は口笛を吹きながら嬉しそうだ。

そして、パレットの上に切除した腫瘍を乗せて俺に見せた。

『ほら、こんなにデカいよ。』

玉虫色の光沢を放つタイソンは、まるで異世界の生物のような姿をしていた。

だが、タイソンは完全に息絶えて、びよ〜んと横たわっていた。

『これ、検査に出して結果を確認するね。』

K先生の言葉に、俺の胸が一気に重くなった。

『この大きさだと、慎重に見る必要があるからね。結果が出るのに2週間かかるよ。』

俺は、不安で不安で仕方なかった。

「あのグロテスクな感じは、きっと悪性だよな…?」

「これがガンだったら…?俺はどうなっちゃうんだろう。」

そんな考えが、頭の中をぐるぐると回り始めた。

手術台を降りた俺は、病院の廊下を歩きながら考えていた。

これからの2週間、俺は平静を保てるのだろうか?

「悪性じゃありませんように…」

そう祈りながらも、モニターに映った腫瘍のグロテスクな姿が脳裏に焼き付いて離れない。

診察室を出ると、K先生が背後から肩を叩き声をかけた。

『多々巻さん、君は大丈夫だよ。多分、大丈夫。僕が保証する。』

その言葉に、俺は一瞬安心したような気がした。

だが、《多分》と《保証》の発言の矛盾に、思わず関西弁でツッコミを入れた。

『多分と保証って、どっちやねん。』

K先生は志村けんの変なおじさんのキメ顔をして、言った。

『あはっ、多分』

『ダッフンダ』

腫瘍だけでなく、ギャグのキレもまずまずという得意気な表情であった。

俺は、K先生を無視するように病院を出て、お尻を抑えながら家路に帰ったのであった。

まさに、お尻を舞台としたアナザーストーリーへ向かうように。

「ドクターK物語登場編」完

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